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聖地・大三島を護る=創る

2018年7月1日(日)〜2019年6月16日(日)

大三島は多島海、瀬戸内にあっても特別な島です。何故なら大山祇神社の存在によって、古くは「御島」と記されたように、神の島とされていたからです。

大山祇神社は推古天皇の時代、594年に創建したと伝えられ、日本総鎮守として全国に1万以上の支社を持つと言われています。

神社は背後に鷲ケ頭山を抱き、宮浦港から参道を介して海に結ばれていました。大山祇神を祀る代表的な神社として「山の神」であると同時に、海に開かれ村上海賊も戦の前に詣でたので「海の神」「戦いの神」としても崇められていたようです。島にアクセスするには船によるしかありませんでした。

このため島は全く開発も行われず、農耕のみが営まれ、美しい伝統的な風景が継承されてきたのです。島として自立し、独自の秩序が護られてきました。

しかし2006年に尾道―今治を結ぶ「しまなみ海道」の開通によって、大三島にもハイウェイで到達できるようになりました。その結果、大山祗神社に参拝する人のほとんどはマイカーやバスで訪れるようになり、船で港から参道を通って参拝する人は皆無となってしまいました。便利になったとは言えるでしょうが、伝統的な神社詣の意味は失われてしまったのです。

大三島が護ってきた島独特の秩序は「しまなみ海道」という近代的な交通手段によって崩壊しつつあります。即ち島の周囲にはりめぐらされていた「結界」が破壊され、「聖地」としての大三島の特異性が失われかかっているのです。

「聖地」とは中沢新一氏によれば、次のような場所だと述べています。(アースダイバー東京の聖地 -講談社)

①「結界」によって周囲から自立したシステムを持つ特別な地域であること

②「自然」に結ばれる回路を備えていること

③単なる観光地でなく、人々がそこで生き生きとした活動をしていること

中沢氏は東京の聖地として「築地市場」や「明治神宮 内苑/外苑」を挙げていますが、上記3条件に照らせば、大三島もまた「聖地」だと言えるでしょう。「築地市場」や「明治神宮外苑」がグローバル経済によって「聖地」崩壊の危機にさらされているように、大三島も「しまなみ海道」の開通によって同様な危機に瀕しているのです。

私達は島の現況を受け入れた上で、なお島が「聖地」としての美しさを保ち続けて欲しい。そのような願いはどのようにして叶えられるのでしょうか。

私達はこの数年間、空き家を修復して「みんなの家」とし、近隣住民の人々が集まることの出来る施設にしたり、柑橘の耕作放棄地を借りて葡萄畑に変えて住民の協力を得ながらワインづくりを始めるなど、小さな活動を続けてきました。

そして大山祇神社の参拝者や「しまなみ海道」のサイクリスト達が島を訪れてくれるのは有難い限りですが、単なる観光客としてではなく、彼らの明日のライフスタイルを探すために島を訪れて欲しいのです。そのためには大三島が、「伝統を護りつつ未来へ向かって創造的である」ような島にならなくてはなりません。即ち「護ること」が「創ること」と同義語であるような島になることです。

幸い島には「明日の大三島」を夢見て汗を流している若い人々がいます。今回の展示ではこうした人々の活動の一端を紹介します。私達はこれらの人々と協力して大三島を「新しい聖地」とするべく、「護る=創る」活動を続けていきたいと考えています。

伊東豊雄 


©Eikoh Tanaka
大三島ならではの野菜をつくる
吉川 努(無農薬野菜農家)


©Eikoh Tanaka
島の香りをボトルに詰めて、大三島初のワインを造る
川田佑輔(「大三島みんなのワイナリー」葡萄栽培農家・ワイン醸造家・ソムリエ)


©Eikoh Tanaka
瀬戸内の夕日を眺めながら、島のワインで乾杯する
伊東豊雄(建築家)


©Eikoh Tanaka
かつての小学校の記憶を伝え、島の未来の生活をつくる
藤原大成・藤原真理(宿泊施設「大三島 憩の家」経営者)


©Eikoh Tanaka
1つのパンに思いを込めて、島を世界に開く
小松洋一(パン屋「まるまど」店主)


©Eikoh Tanaka
みんなの家から明日の豊かな暮らしを考える
久保木祥子・関戸沙里(「大三島みんなの家」スタッフ)


©Eikoh Tanaka
古いものと新しいものが溶け合う、聖地・大三島を描く
Beining Chen(ハーバード大学デザイン大学院〈GSD〉)

主催 今治市
NPOこれからの建築を考える 伊東建築塾
協力 市川和男、愛媛新聞エリアサービス宗方 奥野 靭、おうちキャンドル、オーガニックゲストハウス&カフェOHANA in御島、大三島憩の家、大三島図書館、大三島ブリュワリー、大三島みんなの家、大三島みんなのワイナリー、大山祇神社、髙智満子、ささき石材、シトラス&アロマ島工房、しまなみイノシシ活用隊、しまなみの駅 御島、関戸斡太、関戸沙里、関戸秀和、瀬戸桜の会 有志、瀬戸内海交通株式会社、轟 夕摩、西口 豊、西口雅代、パン屋まるまど、万福寺、村上井盛堂、もり自然農園、吉川自然農園、旅館さわき
ディレクター 伊東豊雄
制作 NPOこれからの建築を考える 伊東建築塾、伊東豊雄建築設計事務所、神奈川大学曽我部・吉岡研究室
写真 西部裕介、田中英行、青木勝洋、高橋マナミ、中村 絵、宮畑周平、山田宗草、吉野 歩
映像 田中英行
音楽 石田多朗
グラフィックデザイン 丸山智也
英訳協力 ジョイス・ラム
マネージャー 古川きくみ

※詳細は、下記のPDFデータをご覧ください。
聖地・大三島を護る=創る(4.1MB)