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聖地・大三島を護る=創る2019

大三島は多島海、瀬戸内にあっても特別な島です。何故なら大山祇神社の存在によって、古くは「御島」と記されたように、神の島とされていたからです。

大山祇神社は推古天皇の時代、594年に創建したと伝えられ、日本総鎮守として全国に1万以上の支社を持つと言われています。

神社は背後に鷲ケ頭山を抱き、宮浦港から参道を介して海に結ばれていました。大山祇神を祀る代表的な神社として「山の神」であると同時に、海に開かれ村上海賊も戦の前に詣でたので「海の神」「戦いの神」としても崇められていたようです。島にアクセスするには船によるしかありませんでした。

このため島は全く開発も行われず、農耕のみが営まれ、美しい伝統的な風景が継承されてきたのです。島として自立し、独自の秩序が護られてきました。

しかし2006年に尾道―今治を結ぶ「しまなみ海道」の開通によって、大三島にもハイウェイで到達できるようになりました。その結果、大山祗神社に参拝する人のほとんどはマイカーやバスで訪れるようになり、船で港から参道を通って参拝する人は皆無となってしまいました。便利になったとは言えるでしょうが、伝統的な神社詣の意味は失われてしまったのです。

大三島が護ってきた島独特の秩序は「しまなみ海道」という近代的な交通手段によって崩壊しつつあります。即ち島の周囲にはりめぐらされていた「結界」が破壊され、「聖地」としての大三島の特異性が失われかかっているのです。

「聖地」とは中沢新一氏によれば、次のような場所だと述べています。(アースダイバー東京の聖地 -講談社)

①「結界」によって周囲から自立したシステムを持つ特別な地域であること

②「自然」に結ばれる回路を備えていること

③単なる観光地でなく、人々がそこで生き生きとした活動をしていること

上記3条件に照らせば、大三島もまた「聖地」だと言えるでしょう。しかし、現在の大三島は「しまなみ海道」の開通によって「聖地」崩壊の危機に瀕しているのです。

私達は島の現況を受け入れた上で、なお島が「聖地」としての美しさを保ち続けて欲しい。そのような願いはどのようにして叶えられるのでしょうか。

近年、大山祇神社の参拝者や「しまなみ海道」のサイクリストが増えています。彼らが島を訪れてくれるのは有難い限りですが、単なる観光客としてではなく、自らの明日のライフスタイルを探すために島を訪れて欲しいのです。そのためには大三島が、今後も「伝統を護りつつ未来へ向かって創造的である」ような島にならなくてはなりません。即ち「護ること」が「創ること」と同義語であるような島になることです。

そして大山祇神社の参拝者や「しまなみ海道」のサイクリスト達が島を訪れてくれるのは有難い限りですが、単なる観光客としてではなく、彼らの明日のライフスタイルを探すために島を訪れて欲しいのです。そのためには大三島が、「伝統を護りつつ未来へ向かって創造的である」ような島にならなくてはなりません。即ち「護ること」が「創ること」と同義語であるような島になることです。

私達は、この大三島という素晴らしい地域に場所を定め、2012年から島の人々の力を借りて、「明日の大三島」を創る活動を続けてきました。大山祇神社参道の空き家を修復して「大三島みんなの家」とし、近隣住民の人々が集まることの出来る施設にしたり、「大三島みんなのワイナリー」では、耕作放棄地となっていたみかん畑を葡萄畑に変え、ようやくワインができ始めました。旧小学校の校舎を改装した宿泊施設「大三島憩の家」では、雨漏りや耐震上の問題で民宿の継続が危惧されていたところ、島に活性化のために建築を再生する意義が認められ、改修する機会を得ました。

現在、大三島には意思や考えを持って、この場所だからこそできる暮らしや活動の実践をされている方が多くいます。2019年度の展示では昨年に引き続き「護る=創る」活動に取り組む人々を紹介します。この展示が島に点在する「護る人=創る人」との出会いに繋がることを願います。私達はこれらの人々と協力して大三島を「新しい聖地」とするべく、これからも「護る=創る」活動を続けていきたいと考えます。

伊東豊雄 

創る人=護る人


©Eikoh Tanaka
家族のために持続可能な農業を考える
花澤伸浩(有機柑橘農家)


©Eikoh Tanaka
ワインを通して循環する暮らしを考える
芥川はるか(「大三島みんなのワイナリー」スタッフ)


©Eikoh Tanaka
「人と人・地域」を結び、故郷の暮らしと文化を次世代に繋ぐ
菅 航輝(旅館さわき若旦那、合同会社ステキナ代表)


©Eikoh Tanaka
自分達にしかつくれないビールで大三島の魅力を伝える
高橋享平・高橋尚子(「大三島ブリュワリー」経営者)


©Eikoh Tanaka
みんなの家に共感し、豊かな暮らしを考える
新近 唯(「大三島みんなの家」スタッフ)


©Eikoh Tanaka
リモートワークをしながら、新しい暮らし方をつくる
増田茂樹・徳見理絵(会社員・「OMISHIMA SPACE」経営者)


今治北高等学校大三島分校 島デザイン部の活動

これからの大三島を担う子ども達が、デザインを通して島の問題を解決する

つくる
2016年には分校生が手作りした家具を熊本の被災地に贈りました


©Manami Takahashi

つたえる
毎年5月に行われる参道マーケットで大山祇神社参道の魅力を観光客に伝えています

かんがえる
2018年に島の休憩所というサイクリストと地域住民が交流する場所を考えました

主催 今治市
NPOこれからの建築を考える 伊東建築塾
協力 伊東豊雄建築設計事務所、今治北高等学校大三島分校、大三島憩の家、OMISHIMA SPACE、大三島ブリュワリー、大三島みんなの家、大三島みんなのワイナリー、株式会社 藤原造船所、菅航輝、菅僚次、教善寺、中村エミ子、のむら農園、花澤家族農園、パン屋まるまど、Beining Chen、村上恵里香、吉川自然農園
助成 公益財団法人朝日新聞文化財団
ディレクター 伊東豊雄
制作 NPOこれからの建築を考える 伊東建築塾
伊東豊雄建築設計事務所
神奈川大学曽我部・吉岡研究室
写真 西部裕介、田中英行、青木勝洋、高橋マナミ、
中村 絵、宮畑周平、吉野 歩
映像 田中英行
音楽 石田多朗
グラフィックデザイン 丸山智也
英訳協力 ジョイス・ラム
マネージャー 庄子利佳

※詳細は、下記のPDFデータをご覧ください。
聖地・大三島を護る=創る2019(4.5MB)