TIMA Blog
「もうひとつのユートピア」オープニングトークを開催しました。
November 20, 2021
2021年10月31日(日)に開館10周年記念展「もうひとつのユートピア」がスタートしました。
今年は伊東豊雄さんが建築設計事務所を設立して50年、伊東建築塾の塾生と大三島に通い始めて10周年と節目が重なる年となり、展覧会では、これまでに伊東さんが描き続けてきた大三島の活動に関するスケッチや文章、事務所の設計活動と共に、大三島で長く暮らす5組の方にインタビューを行い、映像展示として島の方々が護ってきた島の様子を紹介しています。
さらにこれまでの建築活動をお話された伊東さんのインタビュー映像や写真家の高野ユリカさんによる大三島の美しい風景を撮り下ろした写真展示も見どころです。
昨年はコロナ禍で内覧会などは見合わせていましたが、今年は会期に合わせて内覧会とオープニングトークを開催しました。
オープニングトークにはインタビュー協力者の皆さまや今治市長の徳永繁樹さん、そして島の方々をお招きし、伊東豊雄さんから展覧会への想いをお話いただきました。
伊東さんは「大三島は特別な何かがあるように感じます。そして自然の中で人が人らしく過ごせる場所です。伊東建築塾の塾生と大三島に通い始めて10年になりますが、塾生は一度島に訪れるとすごく気に入ってしまいます。
ミュージアムが開館した2011年は、東日本大震災が発生し、自然に抗うような防波堤の提案など非人道的な復興計画がなされました。私は被災地に足を運び、そこで被災された方々が集える「みんなの家」の活動をはじめます。その経験から大三島での活動にも繋がっていきます。提案をしてもなかなか実現には難しいプロジェクトもありましたが、島に移住してきた若い人達とミカン畑の耕作放棄地を利用し、ぶどうを育てワインをつくったり、さびれつつある大山祇神社の参道に人が集える「大三島みんなの家」の活動などをしてきました。ワインづくりでは、自分が耕しているわけではありませんが、ぶどうが収穫できた喜びは素晴らしく、自然の恵みを受けながら暮らしていくことが人間らしいことだと感じます。
現在の大三島があるのも島に住んでおられる方によって、島の豊かさを護ってこられたのだと思い、今回は長く住んでおられる方にインタビューをさせていただき、かつての大三島の様子をお話いただきました。
私が行ってきた建築活動と大三島の活動で理想的な社会を目指していくことが今回の展示タイトルである『もうひとつのユートピア』へと続いています。私は大三島を観光の島ではなく、住みやすい島にしていきたいと考え、大三島みんなの家やワインづくりなど、ささやかでも大三島で活動を続けていきたいと思っています。」とお話をされました。
最後にインタビュー映像にご協力いただいた3組の方が来場してくださったので、ご紹介をさせていただきました。伊東さんの「ひとことお願いできますか?」との問いに藤原正富さんは「大三島は世界に誇れる場所だと思っています。」と笑顔でお話くださいました。大三島で何十年と暮らしてきた皆さんだからこそ感じる、島の変遷や生活の尊さなど、それぞれの視点で話されているのがとても興味深い内容となっています。
本展の会期は2021年10月31日(日)~2022年9月16日(金)までとなっています。
どうぞ来館した折りには、大三島をもうひとつのユートピアとする伊東さんの建築への想いや島の方々のインタビュー映像から島を知っていただき、観覧後はぜひ島を巡って、素敵な瞬間に出会っていただきたいと思います。
皆様のご来館をお待ちしております!
Photo by Katsuhiro Aoki